先月は労働局から緑色の封筒(もしくは青色の封筒)が届いたかと思いますが、今月は「日本年金機構」と書かれた茶色の封筒が届いている頃かと思います。
これは「算定基礎届」という書類で、年に一度の社会保険の定時決定をするための書類になります。
定時決定とは何か?
ここで改めて定時決定の確認をしておこうと思います。
社会保険に加入している社員の方や役員の方(当然に代表取締役の方も)の社会保険料は、それぞれの賃金に連動して決定されています。この社会保険料を決定する際に基準となるのが、標準報酬月額という等級表になります。
しかし昇給などで賃金に変動があった場合、実際の賃金と標準報酬月額に大きな差がでてくることがあります。そのため、1年に1回見直しを行い、今の賃金にあった標準報酬月額を決める必要があります。
標準報酬月額は、今の社会保険料に影響するだけでなく、年金額や傷病手当金などの保険給付の計算にも使われるため、正しく届出をする必要があります。
定時決定の対象者は?
労働保険の年度更新では、社員のみならずアルバイトとして雇用している従業員も対象となりました。
社会保険の定時決定は、以下の社会保険加入者が対象者となります。
【対象となる人】
- 5月31日以前に資格取得した社会保険加入者で、7月1日現在、在籍中の被保険者および70歳以上被用者
- 7月1日以降に退職する人
- 産前産後休業・育児休業等の休職者
- 介護休業中の休職者
- 私傷病休職者
- 二以上勤務者
【対象とならない人】
- 6月1日以降に入社(資格取得)する人
- 6月30日以前に退職(7月1日以前に資格喪失)する人
- 7月随時改定対象
- 8月、9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った人
新しい標準報酬の決定方法
毎年4、5、6月に支給する3か月間の賃金を報酬総額とし、9月以降の新しい報酬月額を決定します。
報酬総額に含める賃金は、支払基礎日数が1か月に17日以上ある月の賃金です。短時間労働者で17日以上の支払基礎日数が1か月もないときは、支払基礎日数が15、16日の月のみ報酬総額とします。ただし特定適用事業所の短時間労働者は11日以上です。
※支払基礎日数とは、賃金支払が発生する労働日、有給休暇、休業日などを合計した日数です。
※特例適用事業所とは、従業員数101名以上の企業です。週20時間以上から社会保険の加入が必要になります。
定時決定の対象となる報酬とは
標準報酬月額の対象となる報酬とは、給料、俸給、手当、賞与などの名称を問わず、労働の対償として受けるすべてのものを含みます。
また、金銭(通貨)に限らず、通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。ただし、臨時に受けるものや、年3回以下支給の賞与などは、報酬に含みません。
金銭(通貨)で支給されるもの | 現物で支給されるもの | |
報酬となるもの | ・基本給(月給・週給・日給 など) ・各種手当(役職手当、通勤手当、住宅手当、家族手当 など) ・継続支給する見舞金、年 4 回以上の賞与 など | ・通勤定期券、回数券 ・食事、食券 ・社宅、寮、自社製品 など |
報酬とならないもの | ・企業が恩恵的に支給するもの (結婚祝金、見舞金 など) ・臨時的に支給されるのも (大入袋、解雇予告手当、退職手当 など) ・実費弁償的に支給されるもの (出張旅費、交際費 など) ・保険給付といて支給されるもの (傷病手当金、労災保険の休業補償給付 など) | ・制服、作業着 ・見舞品、食事 (本人の負担額が、厚生労働大臣が定める価額により算定した額の 2/3 以上の場合) など |
定時決定に関するQ&A
Q1 年俸制の一部を賞与として支給しています。平均賃金の算定時は賞与分を除いてもいいですか?
年俸制の一部を賞与として支給しているときは、その賞与として支給された部分についても平均賃金の算定に含めなければなりません。
一般的に、「賞与」とは、その支給額があらかじめ確定されていないものを指します。平均賃金とは、日々の労働者の生活を守るための手当や補償を支払うときの基準です。そのため、あらかじめ支給額が確定されていない「賞与」を平均賃金の基礎に含めることは、平均賃金の算定の趣旨には適しません。
しかし、年俸制の一部を賞与という名目で支給するときは、その支給額はあらかじめ確定しています。そのため、平均賃金の算定に含めなければなりません。
Q2 給与計算が20日締め、当月末払いのため、4月1日に入社した社員について、4月の給与は1ヵ月分の給与が支給されません。支払基礎日数は17日以上ありますが、4月は算定の対象月となりますか。
給与支払対象期間の途中から入社することにより、入社月の給与額が1ヵ月分の額とならない場合は、対象月に含めることで本来の等級よりも低い等級で標準報酬月額が決定されてしまうため、1ヵ月分の給与が支給されない月(途中入社月)を算定の対象月から除いて計算を行います。このため、4月を算定の対象月から除いてください。
なお、算定基礎届を提出する際は、「⑭総計」欄から途中入社月の報酬月額を除いた金額により算出した平均額を「⑯修正平均額」欄に記入したうえで、「⑱備考」欄の「4.途中入社」および「9.その他」に〇を付し、括弧内に「資格取得年月日」を記入してください。
参考|日本年金機構『算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和5年度)』
Q3 定時決定において、休業手当が支払われている月も含めますか?
定時決定においては、休業手当が支払われている月も含めます。休業手当は「賃金」にあたるためです。
算定基礎届の支払基礎日数および報酬に含めて届出してください。
なお、備考欄「9 その他」を〇で囲み、休業手当の支払月といつから休業しているかを記入してください。
Q4 算定基礎届の届出省略の申出を行った被保険者について、8月または 9月の随時改定の要件に該当しないことが判明した場合、どのような手続きを行えばよいでしょうか。
当該被保険者の算定基礎届を作成したうえで、速やかに提出してください。
まとめ
2023年の算定基礎届(定時決定)の届出期限は、7月1日(土)~7月10日(月)となっております。
期間が非常に短いため、どうしても忘れがちになると思いますので、封筒が届きましたら早めに着手することをお勧めします。
小濱社会保険労務士事務所では、年度更新や算定基礎届などの年次業務について、スポット(単発)での依頼もお受けしております。
以下の料金表にも金額を記載しておりますので、ご依頼を検討されている場合は是非参考にしてください。
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